休養学:あなたを疲れから救う
- 院長 大澤慎吾
- 5 日前
- 読了時間: 12分
皆さん、疲れてはいないでしょうか?
ある調査では、約8割に人が「疲れている」、「慢性的に疲れている」と回答しています。
疲れをとるための「休養」
これを今回のテーマにお話しします。
参考文献は『休養学:あなたを疲れから救う』(著:仲野広倫)です。
この本は、ただ「休む」だけではなく、「どう休むか」に焦点を当てて、心身のパフォーマンスを高めるための“攻めの休養”を提案している内容です。
文章より、動画のほうがいい
という方は仲野広倫さんの出演する動画のリンクを張っておきますのでご覧ください。
疲労とは何か?
“過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養への願望を伴う身体の活動能力の減退状態”
と定義されています。
「疲労」とは、体や脳を使い続けたことで「いつも通りのパフォーマンスが出せなくなる状態」のことです。
これは体の状態として現れている、客観的な疲れです。
これに対し、全身や頭にぼんやり感じる“だるさ・重さ・集中力の低下”など、「休みたい」という感覚を「疲労感」といいます。
なぜ、疲労と疲労感の違いが大切なのか?
それは、疲労感は「感覚」なので、ごまかすことができます。
「大切な仕事があるから、疲れていても頑張らなくてはいけない」
「やりがいがあるから、無理してでも続けたい」
「コーヒーやエナジードリンクを飲んだら、もう少しやれそう」
といった様に、気合いや責任感などの精神的なものや、カフェインの覚醒作用などにより、疲労感がマスキング(隠される)されることがあります。
一時的に疲労感を忘れて頑張るのは良いかもしれませんが、これをいつも繰り返してしまう人は体に疲労がたまり続けてしまいます。それを放置し続けることにより、体調不良や病気につながります。

なぜ疲れるのか?
“「たかが疲労」ではありません。疲労は病気につながる重要なサインなのです。”
“疲労感とは「あなたは疲労しています。これ以上活動を続けると危険ですよ。今すぐ休みなさい」という警告、アラート”
毎日仕事をして、家のことをして、子育てして、趣味や運動もして…「なんだか最近、疲れがとれないなぁ」って思うこと、ありませんか?
でも、ちょっと考えてみてください。なぜ、私たちは「疲れる」ようにできているのでしょうか?
疲労は“体からのサイン”
疲れを感じるのは、「がんばりすぎてるよ」「少し休もう」という体からのメッセージです。もし、疲れを感じなければどうなるでしょう?きっと私たちは無理を重ねて、体や心が壊れるまで動き続けてしまうかもしれません。
疲労は、言わば“生きるための「安全ブレーキ」”です。
「疲労」はひとつじゃない
疲労には大きく分けて3つのタイプがあります。
①【体の疲れ】身体的疲労
長時間の立ち仕事やスポーツの後に感じるような「筋肉の疲れ」です。
筋肉を動かすエネルギー(ATP)が減ってきたり、筋肉の中で微細な炎症が起きたりして、「もうこれ以上動けない」という状態になります。
②【脳の疲れ】中枢性疲労
体が元気でも「やる気が出ない」「集中できない」ことがあります。これは脳や神経の使いすぎによる疲労です。
パソコンやスマホの見すぎ、考え事やストレスが多いと、脳の情報処理を担う部分が疲れて、「活動を抑えよう」とする信号が出てしまうのです。
③【心の疲れ】精神的疲労
仕事や人間関係でのストレス、緊張、不安などが続くと、心のエネルギーがすり減っていくような感覚になります。
この心の疲れが続くと、眠っても疲れがとれなかったり、やる気や気力が回復しにくくなります。
「乳酸=疲労の原因」じゃない?
よく「乳酸がたまって疲れる」と聞きますが、これは古い考え方です。
今では、乳酸は体のエネルギー源として再利用される物質だと分かっていて、疲労の原因は乳酸ではないことが明らかになっています。
むしろ疲労の原因は、筋肉や神経、脳にたまる微細なダメージや炎症反応、神経伝達物質の変化などが複雑に絡んでいるんです。
「守りの休養」から「攻めの休養」へのシフト
🔄従来の休養サイクル

「活動 → 疲労 → 休養」
疲れたら休む。もちろんこれも大事です。しかし、休養だけでは、疲労は完全には回復しきれないのが現実です。
たとえば、疲れて寝た翌日も「なんだかまだだるいな…」と感じたり
土日を家でゴロゴロして過ごした後、月曜日に出勤するときの憂鬱な感じ・・・
経験ありますよね?
✅新しい休養サイクル

「活動 → 疲労 → 休養 → 活力」
疲労を抜くだけでなく、活力を取り戻すことがゴール。
“今の日本人は休養しても50%程度しか充電できていないイメージです。”
“疲労の反対語は「活力」である”
“休養だけでは50%程度しか充電できなくても、活力を加えて満充電に近いところまでもっていく”
🔋休養で50%、活力で100%へ!
休養だけでは、イメージとして50%程度の回復にとどまることもあります。
でも、そこに“活力を生む習慣”を取り入れることで、フル充電=ほぼ100%の状態に近づけることができます。
ただ安静に過ごすのを「守りの休養」としたら
少し自分に負荷をかけて活力を高めるのを「攻めの休養」といいます。
では、具体的にどう休めばいいかを解説していきます。
最高の「休養」をとる7つの戦略
休養はただの「寝る・休む」だけではありません。目的と方法によって、7つのタイプに分けられます。
1️⃣休息タイプ🛌

「寝る」「横になる」「目を閉じる」など、身体の活動レベルを意図的に下げて、エネルギーの消費を抑える休養です。
“エネルギーの消費を抑制して、エネルギーが回復するのを待つ、受動的な休み方です。いわば「消極的休養」といえるでしょう。”
もっとも基本的で、誰にでも必要な休養方法。特に、肉体的な疲労や睡眠不足による疲労に対して非常に効果的です。
🔹 具体的な方法
睡眠をとる
昼寝(パワーナップ、15〜30分)
静かな空間で横になる
ソファでゴロゴロする
✅ ポイント
休養=だらだら過ごすことではない
→ 「回復させる意識を持った静養」が大事
“自分で決めて”休憩する
→「疲れをとるために、数時間横になる」と主体的に決める
2️⃣ 運動タイプ🏃♂️

休養と聞くと「じっとして休むもの」と思われがちですが、適度に体を動かすことも立派な休養になります。これが「運動タイプ」の休養です。
“適度な運動をすることで、より疲労回復が進むからです。何もせずじっとしているより、運動をしたほうが疲れがとれます。”
心拍数や血流を適度に上げることで、血液やリンパの循環が改善し、疲労物質の代謝が促進されます。
🔹 具体的な方法
ウォーキングや軽いジョギング
ストレッチやヨガ
ラジオ体操などの軽い運動
入浴(湯船に浸かる)
✅ ポイント
あくまで“軽い”運動が大切
→ 疲れている時にハードな運動は逆効果
血液循環を改善するのが目的
→ 入浴も血液の流れを良くする
湯船につかると水圧がかかる
→体に水圧がかかることにより、血液が押し返される
3️⃣栄養タイプ🍙

疲れたときに「栄養ドリンクを飲む」「スタミナ料理を食べる」というのはよくあるパターンですが、本当の“栄養による休養”は、単に“栄養を摂る”ことだけではありません。
むしろポイントは、「食べない栄養」= 消化器官を休ませること にあります。
“私たちも活力を得るためには、必要以上に食べないことを心がけることです。それが体に休養をとらせることになります。”
なぜ「食べない」ことが休養になるのか?
食事を摂ると、胃や腸・肝臓・膵臓などの内臓がフル稼働して、食べ物を分解・吸収・代謝しようとします。
つまり、食べること自体が“身体の仕事”になり、内臓が疲労します。
疲れている時に内臓にまで負担をかけ続けると、本来“回復に使うべきエネルギー”が消化に使われてしまい、疲労が抜けにくくなってしまいます。
🔹 具体的な休養法
食事量を抑える
毎日決まった時間に食事をとる
プチ断食・ファスティングを取り入れる(※体調に合わせて)
消化の良い食材(おかゆ・スープ・温野菜など)を選ぶ
✅ポイント
内臓にも“休む時間”が必要
→ 内臓疲労をためないことが、全身の回復につながる
疲れている時ほど、軽め・温かめ・やさしめの食事
「栄養を摂る=元気になる」とは限らない
→ 本当に必要なのは「吸収できるコンディション」
4️⃣ 親交タイプ🤝

疲れているとき、「誰かと話したらスッキリした」という経験はありませんか?このように、信頼できる人との関わりが心を癒してくれるのが「親交タイプ」の休養です。
人は一人では回復できないときがあります。気の合う友人、家族、同僚、同じ趣味の仲間などと関わることで、孤独感が和らぎ、安心感や元気が湧いてくるのです。
“スキンシップやハグをしなくても、言葉を交わすだけで十分「親交」になります。”
なぜ「親交」が休養になるのか?
人とのポジティブな関わりによって、脳内ではオキシトシンやセロトニンといった“癒しのホルモン”が分泌されます。
これらのホルモンは、
ストレスを軽減
気分を安定させる
自律神経のバランスを整える
などの作用があり、心理的な疲労回復にとても効果的です。
🔹 具体的な方法
友人とおしゃべりする
家族とのんびり過ごす
ペットと触れ合う
挨拶を交わす、雑談をする
自然に触れる、森林浴
✅ポイント
「誰と過ごすか」が重要
→ 無理に付き合う相手は逆効果。安心・信頼できる人と
人づきあいが苦手な人は、無理に親交する必要はありません
コミュニケーション自体が、感情をポジティブにする
5️⃣ 娯楽タイプ🎮

疲れているときに「映画を観て笑ったら気分が軽くなった」「音楽を聴いたらリラックスできた」そんな経験、ありませんか?
このように、遊びやエンタメ、スポーツなど“楽しい”“心地いい”と感じることが心の回復に繋がるのが「娯楽タイプ」の休養です。
“「鼻歌を歌う」「爪を切る」「炭酸飲料を飲む」「窓を開けて空気を入れかえる」「歯磨きをする」といったことです。どれも何気ないことですが、十分に気分を変えてくれます。”
なぜ「娯楽」が休養になるのか?
楽しいことに集中しているとき、脳内ではドーパミンやセロトニンといった“快感ホルモン”が分泌され、気分が明るくなり、ストレスホルモン(コルチゾール)が下がります。
つまり、「楽しいこと」は自律神経を調整し、心をリセットする作用があります。
🔹 具体的な方法
映画・ドラマ・アニメ鑑賞
音楽鑑賞・カラオケ・楽器演奏
本を読む
推し活
✅ポイント
自分にとって楽しみになることを行う
自分なりの気分転換方法を書き留め、リスト化しておく
自分の趣味や嗜好を追求する
惰性で行い、依存しないように注意!
6️⃣ 造形・想像タイプ🎨

絵を描いていると集中できて、気持ちが落ち着く。手を動かして何かを作っているときは、頭の中がスッキリする。文章を書いていると気持ちが整理される。
こんな経験がある方は、まさに「造形・想像タイプ」の休養をとっている状態です。
このタイプは、アートや創作、イメージの世界に没頭することで、心の疲労を回復させる休養法です。
“形のある、目に見えるものを残さなくてもかまいません。”
“好きなことについて空想するだけで十分です。”
🔹 具体的な方法
絵を描く・塗り絵
DIY・手芸・料理など
写真を撮る
日記やエッセイを書く
瞑想する
✅ポイント
何かに集中したり、好きなことに思いをめぐらせたりすることで疲労感が軽減する
7️⃣ 転換タイプ🔄

同じ場所、同じ人間関係、同じルーティンで過ごしていると、心と体に余白がなくなっていきます。
そこで、
いつもと違う環境に身を置く
役割から一時的に離れる
この「転換」があることで、脳や心に“新しい空気”が入って、リフレッシュできるのです。
“転換とは周りの環境を変えることです。”
“転換タイプの最たるものが旅行です。”
🔹具体的な方法
旅行に行く
洋服を着替える
買い物や外食をする
部屋の模様替えをする
✅ポイント
外部環境を変化させることで、気分をリセットする。
掃除など気軽なことでもOK
7つのタイプを組み合わせる
「どれか1つを選べばいいの?」と思うかもしれませんが、大切なのは、複数の休養タイプを“組み合わせる”こと です。
人の疲労は、身体・脳・心・社会的なものなど、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。だからこそ、「1つの休養」ではカバーしきれないこともあるのです。
たとえば、こんな組み合わせ
例)「家族と遠出して、山に登り、作ってきたお弁当を食べる」

親交タイプ:家族との交流
転換タイプ:遠出をして違う環境へ
運動タイプ:登山という軽い運動
造形・想像タイプ:お弁当をつくる
→このように、複数の休養タイプが同時に満たされることで、疲労回復効果が高まります。
“たくさんのタイプを組み合わせて、いろいろなタイプの休養の「いいとこどり」をどんどんしてみてください。”
“大事なのは自分から主体的に行うことです。休み方を学んで、それをマスターし、自分自身の個別の休養の方法を見つけてみましょう。それが本当に積極的な「攻めの休養」です。”
💡 組み合わせはアイディア次第!
7つの休養タイプをどう組み合わせるかに“正解”はありません。むしろ、自分の好みやライフスタイルに合わせて、自由な発想でアレンジすることが大切です。
たとえば――
🌿自然の中でキャンプをして料理を作る → 「転換」+「親交」+「造形」
🛀温泉にゆっくり浸かって空想をする→ 「転換」+「運動」+「造形」
🐕いつもと違うルートで犬の散歩→ 「転換」+「親交」+「運動」
💤お粥を食べて早めに寝る→ 「栄養」+「休息」
組み合わせは“自分を知る”ことから
「何をすると気分が晴れるのか」「どんな時間が自分にとって心地いいのか」そんな自分の感覚に目を向けてみましょう。
一人で過ごすのが好きな人もいれば、誰かと一緒にいる方が癒される人もいます。だからこそ、休養の組み合わせも“その人らしさ”が出るはずです。
お休みの日や休憩時間をなんとなく過ごすのではなく、「どう休むか」を考えていただくと、日々の生活に「活力」が加わり、いつもの疲労感も変わってくるはずです。
皆さんも自分自身の休み方を見直してみてください。
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